PCR検査
新型コロナウイルスの影響で多くの方がPCR検査について知ったのではないでしょうか?
PCRとは、polymerase chain reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略語です。ポリメラーゼとはDNAやRNAというウイルスの遺伝子を構成する一部です。PCR検査は、ある特殊な液体に検体を入れ、ウイルス遺伝子の特徴的な一部分を切り取り連鎖反応で増幅させる検査です。
こう見ると案外簡単そうに見えると思います。
そうです。実はとても簡単な検査になります。
ただし、十分な訓練を受けていない方がこの検査を行っても決して正確な結果は得られません。
やることは簡単。
決められた試薬を定められた量入れます。
プライマー(増幅させたい塩基配列と相補的配列のDNA)もしくはプローブ(特定の塩基配列に発光物質が付いているもの)を決められた量入れます。
機械に検体を入れて約2時間待ちます。
(温度を上げたり下げたりすることで、塩基配列を切ったり、くっつけたりを繰り返します)
以上になります!
簡単に書きましたが、やっていること自体はこれだけです。
もし、新型コロナウイルをターゲットとした場合は、新型コロナウイル特有の配列を増やしてあげて、光らせることで目に見えるようにする。
これがPCR検査になります。
「そんなに簡単なら何で検査数が増えないんだ⁉」
この質問に対する答えは、政治的な問題もあると思いますが、そもそも多くの検体を検査することが出来ない点が大きな要因であると思います。
まず初めにPCR検査は目で見ることが出来ないウイルスなどを、検出することの出来る優れた検査であることは間違いありません。しかしこの検査で扱う、試薬やプローブ・検体ですが、規定量は数μlになります。
多くの方はあまり馴染みのない単位になるかもしれないですが、簡単に言えば目薬1滴が40~50μlなので、その20~30倍少ない量になります。
この微量な液体を全ての検体に同じように入れるという事が、実はとても大変です。
そして、いくつかの検体を同時に処理するため、入れ間違いや入れ忘れ、コンタミネーション(他の人の検体や、飛び散った試薬などで検体が汚染されること)に気を付けないといけません!
動物実験などであればやり直せますが、これがもし患者さんの検体であれば…
そして新型コロナウイルス患者さんの検体であれば…
以前、検査過誤で記者会見があったことは記憶に新しいことと思います。
ここまで読んで下さった方には、なぜPCR検査の検査数がすぐに増えないのか?についての答えが想像つくと思います。
個人的には
1、PCR検査はとても神経を擦り減らす検査のため、無暗に検査数を増やすことが出来ない
2、そもそもPCR検査を行える人材がほとんどいなかった(検査技師を含め)
3、PCR検査を行うための機械が普及されていなかった
以上の3点が大きな要因であると感じます。
検査技師会ではPCR要員育成のため、5月にPCR検査の概要を説明するビデオの公開などを行っています。PCRの簡易キットも開発されているので、今後検査数は増加していきます。
遺伝子分野というなかなかに難しい分野が今後、検査技師の活躍の場になると思うと、学び続ける大変さが身に沁みますね。
今回はこれで以上です。ありがとうございます。拝